高い品質と効率的なものづくりを支える「人の手」

第一工場 溶接工程 岩田さん、張り工程 植竹さん

東洋工芸の茨城工場では、専門的な知識と技術を持った「人の手」とチームワークが高い品質と生産現場の効率性の両立を実現しています。今回は溶接工程の岩田さんと、張り工程の植竹さんにお話をお聞きしました。

この職場で出会えた技術の面白さ

第一工場 溶接工程 岩田さん

岩田さん:
今、私が主に担当しているのは金属加工で、溶接工程の主任をやらせてもらっています。
茨城工場では、ロボットによる「機械溶接」と手作業で行う「手溶接」を併用していますが、私自身のこだわりは手溶接の品質を追求することです。
東洋工芸に入社する前、さまざまな職種を経験しましたが、本気で深めてみたいと思う仕事に出会えませんでした。しかし、この現場で仕事をするなかで、手溶接の奥深さを知り、自分の中の“職人気質”が芽生えたと思います。
例えば、椅子の金属脚の溶接部分。強度だけでなく、溶接した箇所の見た目の美しさも大切にしています。溶接痕(溶けた金属によって接合部分にできるウロコ状の痕跡:ビード)には、手がけた人の腕前がはっきり見て取れます。技術力が高ければ、溶接痕も均等で美しいものなんです。
ホテルの宴会場のバンケットチェアは、溶接部がお客様の目に触れやすい。その人にとって晴れの日に座る椅子は、品質の良い製品であるべきで、そのための技術力だと考えています。
 

自分の仕事だけでなく、工程全体に気を配る

第一工場 張り工程 植竹さん


植竹さん:
私は張り工程における裁断を担当しています。
椅子の座面や背面に使用する布素材を、設計に合わせてカットし、それを「縫製」「張り」へと渡していきます。
自動裁断機によるカットだけでなく、裁断機のサイズに合わない幅の素材や特注品などは、型紙を用いて手作業による裁断も行います。
カットには正確さとスピードが要求されます。誤差なくカットを行うには、やはり経験も必要で、私も最初の需要期(12月~3月)を乗り越えてから、一人前になれたと思います。
また、裁断の工程は、製品を組立てる前の下準備ともいえます。作業に取り掛かる際に、素材や色に誤りがないか、布に汚れやキズがないかなど、細心の注意を払い、後工程で大きな影響が生じないように心がけています。
裁断の出来栄えだけでなく、工程全体を見据えることが大切です。

現場のチームワークが「お客様からの信頼」の基盤

植竹さん:
茨城工場の良いところは、相互に助け合うチームワークがあるところだと感じています。
需要期には工程によって業務量がかさみ、残業が増えることがありますが、そのような時は比較的手の空いている工程から支援の動きが起きます。決して指示があってのことでなく、自然とそう動く雰囲気があるのです。
もう一つの良い点は、全員で品質を重視しようとする姿勢。製品へのクレームが入ったときは、速やかに朝礼で全体共有がなされ、品質管理の担当のみならず全工程で原因究明へと早期に動き出します。
 
岩田さん:
そうですね。納期の関係などで、特定の現場に一時的な負荷がかかる時がありますが、工場全体で連携して切り抜ける力には、私もすごいと感じることがあります。
このような場合、一般的にはどこか特定の工程や部署に負担が偏りやすいものですが、一つの部署だけで対応するのではなく、会社全体で解決する。普段は各部署が別々に動いていますが、いざという時はさまざまな部署の頼もしい人たちが率先して連携し、難題を乗り切る。これが東洋工芸の強みですね。
品質管理も納期厳守も、お客様との約束ですから、現場全体で果たしていくことが東洋工芸のこだわりだと思っています。

機械の効率性に職人の手のハイブリッド

岩田さん:
人間の手作業には無意識な補正動作や微妙なブレがあって、手溶接にはそれらが活かされます。一方でロボットの動きは入力した指示どおりに正確無比です。その両方の技術の特性をうまく反映することで、現場の課題を解決できることも多いと感じています。
実際、過去に機械溶接のプロセスで不良が発生したとき、当初その原因を特定できずに困っていたことがありました。その際、手溶接の観点から機械溶接のプロセスを丁寧に紐解き、細やかな改善を重ね、結果的に不良発生をゼロにできた経験がありました。
 
植竹さん:
裁断の工程においても、人の手で行う仕事にもいろいろな気づきがあります。例えば、手裁断の経験値をデータに反映することで、自動裁断でカットする対象を広げることが可能になるんです。このデータ作成は、上司が以前から行っているのですが、最近は「俺の出番はもうないよ(笑)」と、私に任せていただいています。
手裁断では、カットする部分の周りに一定の余白が必要になりますが、自動裁断ではそれを最小限に詰めることができます。自動裁断の活用幅を広げることは、布の無駄を省くことにもつながります。

さらに先を、もっと高みを、想い描く

岩田さん:
今後より一層、溶接の技術を深めたいと考えています。他社で溶接技術を習得して入社した部下がいるのですが、彼から刺激を受けることも多く、切磋琢磨しています。また、当社の工場には、素材の加工から製品の完成までを行えるさまざまな設備とそこに携わる経験豊富な先輩がいるので、私も幅広い技術と機械を習得していきたいと思います。

植竹さん:
私も仕事の幅をもっと広げていきたいと思っています。
今後どうしていきたいかを改めて考えてみると、自分の心の奥に「最初から最後まで自分でものづくりをしてみたい」という気持ちがあるようで(笑)、新商品の試作など、「自分でまず形にしてみよう」と思ったときに、サラッと完成させられるようになりたい。そんな将来を想い描いています。

2024年4月掲載